先日、近場で行ったことのない店を開拓すべくある小さなレストランに予約を入れた。
そのレストランは夜の予約しか受けないようで一人予約もアレなので、知人と二人で夜に予約した。
料理はヨーロッパの端の方で日本ではあまり馴染みのない料理なので、隠れ家的でいい感じだ。
異国の味付けを楽しむために外食するのが好きだ。
店に入ると10人入れば満席の小さなお店。
そしてお店は初老の男性店主が料理と給仕を一人で全部こなすようだ。
大丈夫なのだろうかと少し不安になったが、10品弱の料理コースで3千円程度の良心的な会計だったし、味も普段食べない感じの味付けでなかなか満足だった。
客は私達しかいないので初老の店主と雑談しながらの食事となった。
世間話から始まり、各々がこだわりのある趣味の話などアットホームな時間が流れた。
初老の男性はたいてい気難しい印象の人が多いが、なかなか馴染みやすいおっちゃんである。
話をいろいろ聞いていくと、どうやら店主は音楽関係の仕事の都合で外国に長く住んでいて、ちょうどその国の料理を覚えたので音楽の仕事を引退後に日本でお店を出すことにしたそうだ。
海外に行く人が少ない世代だと思うし、相当なチャレンジ精神である。
もう何十年もお店をやっていて、最近は1日2組までが予約の限界にしているらしい。
その日の客はなんと私たちだけだったよう。
受け入れる客を増やさないのは客への対応がおろそかになるし、忙しいのが嫌なんだとかで、なんとも優雅な(商売っ気のない)店主である。
そして、楽器の仕事はもうやめたが、趣味で楽器をいろいろやっているらしく、楽器の演奏もしてくれた。
流石にプロでやっていただけあってかなり上手い。
そして、音楽の話をしていると個人で楽器教室もしているとのこと。
マンツーマンで格安で教えてくれるようだ。
具体的な金額は書かないけど、無職の私でも払えるくらいには安い。
なんでも、一人一人を個別で教えて上手くなって行くのを見るのが楽しいんだそうだ。
私はマイナー楽器を買って、この人のレッスン受けてもいいかなと思ったりもした。
昔、ヤマハの楽器教室でサックスなんかを体験したことがあるけど、授業料高くて体験だけで諦めたっけなあ。
長くリタイア生活しているとエンタメを消化することに飽きてきて、新たな技能を覚えたり、表現したりといった欲が出てくるものだし。ちょうどいいかもしれない。
この料理人のおっちゃんは昼は楽器教室、夜は料理人。
対応する客は極限まで抑えて、楽しく仕事して、貰える報酬で食べていければいいという考えみたい。
仕事の事をあれこれ話すのがなんとも楽しそうである。
好きを仕事にという路線はこういう働き方なんだろうなと思う。
少し他人から抜きん出た専門性を磨いて、楽天的で、あまり大きな収入は狙わず細々働く充実感を感じながら続けていく。
こういう働き方ならいいかなと思う。
twitterやブログ界隈は怪しい金融商品を勧めたり、商材を信者に売りつけて稼ごうという人が目につくけど、少しだけ一般と差別化できる技能を磨いて地道に商売をする人は地に足がついている感じでいい。
自分も何か世間より少し上回る専門性を提供出来て、サービスを提供する良い充実感を感じながらやっていける商売の種を見つけて行けたらいいのだけど。
そんな事を思いながら夜は更けていった。
それはいい人生ですね。
やりたいことやって、それで事が上手く回って食っていけるなら最高です。
二組しか予約うけないのに低料金ってことは本当に欲がないんでしょうね、普通は単価上げると思いますが。
僕も何か好きなことやっていたらそれが日銭になって、それでやっていけるような状態を作りたいですね。